ボーイング777の製造1号機

新型の飛行機が出てくる場合、必ずテストフライトに使用される機体が何機か製造されます。例えば現在量産に向けたテストが実施されている三菱航空機のMRJは、4機の試作機が製造されていまして、アメリカでテストが続けられています。一方で、すでに量産体制に入っているボーイング787の場合、初期のテストフライト用に製造された機体は、テストが終了したので博物館入りしていたり、すでに解体されたりしていまして、試作機として製造される機体の運命は、最近は解体される、と言うケースが多いようです。
ボーイング747の生産1号機は現在アメリカ・シアトルの航空博物館に保存されているのですが、一方で今の世界の空の「主役」ともいうべきボーイング777の1号機、実はつい最近まで空を飛んでいて、乗ることができました。

なんだ、キャセイの777-200じゃないですか、と言うなかれ。このB-HNL、実はボーイング777の製造1号機で、当初はボーイングのテストフライト用機材として使用されていた機体です。製造は1994年と、今から25年前。-200LRや-300ERでないボーイング777は、「ボロプルセブン」と口の悪い航空ファンには呼ばれていますが、そのボロプルセブンの中で一番ボロい、究極のボロプルセブンかもしれません。
ちなみに1994年6月12日の初飛行から6年間はボーイングの試験飛行用の機体として使用されまして、その間はエンジンがプラット&ホイットニーのPW4000でした。
ここまで書いてピンときた方は同好だと思うのですが、キャセイパシフィック航空のB777-200/300、いわゆるボロプルセブンは、確かロールスロイス・トレントだったはず、と言うことです。

この機体、ボーイングのテスト機として使用を終えた後、エンジンの換装も行い、キャセイパシフィック航空へとデリバリーされて行くことになりました。しかも、キャセイパシフィックのB777-200は、B-HNA、HNB、HNC、HNDと居て、HNEからは-300がすでに登録されています。-300の間の、HNLがこの機体には割り当てになり、B-HNLとして2000年に登録されています。-200のA~Dの4機は、英領香港も知っている機体で、全機VR-HNA~HNDの登録履歴もあり、当然香港啓徳空港の経験もある機体ですし、私も一度だけですが、啓徳からのフライトでB-HNCに搭乗しています。ところがHNLとして登録されたB777の1号機は、この4機よりも製造時期が早いにも関わらず、英領香港も啓徳も知らない機体、と言うことになります。
2000年にデリバリーされた後、私自身がB777-200に乗る機会は少なく、この機体も狙って乗れるものではないので、よく香港で撮影している時に被写体として撮影するにすぎませんでした。ところが2016年に、クアラルンプールから香港に向かうフライトで、偶然この機体に乗るチャンスに恵まれました。

飛行中の客室は3-3-3の9アブレスト配置になっています。個人用モニタも全席に装備されており、短距離路線向きとしては十分な客室です。クアラルンプールから香港までは4時間弱のフライトですので、これで十分と言えば十分でしょう。

降り際に撮影した製造番号プレート。製造者シリアル番号27116は、まぎれもないボーイング777の1号機の物です。

こちらはキャセイパシフィック航空の所属プレート。日本の航空会社はあまりつけていませんが、海外の航空会社の機体は、こうしたプレートがついていることがありますね。


さて、このボーイング777の1号機ですが、残念ながら2018年6月に現役を引退し、厦門にある整備会社に保管された後、2018年9月にアリゾナの航空博物館に寄贈され、展示されることになりました。24年に渡って空を飛んできたこの機体に、乗客として乗ることはもうできないようです。

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