90年代の国際線~その2 フィンエアーの直行便

今や日欧路線のメインルートの一つにもなったフィンエアのヘルシンキ経由。ここ10年くらいで、フィンエアーはA330、A340などを使ってアジアへの路線を一気に拡大したので、会社の規模も急拡大した感があります。
この航空会社、実は日本乗り入れは1983年と欧州系の中ではかなり遅い方でしたが、乗り入れ当時からある「売り」になることがありました。それは、「ヘルシンキまでノンストップで運航する」ということでした。
今の日欧路線は、シベリア上空を通過するのが一般的で、フライトレーダー24などを見てみると、ロシアの上空を無数の飛行機が東から西、西から東へと飛んでいるのを見ることができます。
ところが東西冷戦真っただ中の1970年代、80年代は、ソ連上空を通過する飛行機はソ連による強制的なモスクワ経由便でないと運航できず、それを避けるために、北極回りでの運航を余儀なくされていました。当時の航空機の航続距離では、北極回りでのヨーロッパ便をノンストップでは運航できませんでしたので、大半のフライトは一度アメリカ・アラスカ州のアンカレジへ向かい、そこから再度ヨーロッパに向かっていました。その時代に、フィンエアーはフィンランドという土地の利を生かして、アンカレジでの給油着陸なしにヘルシンキに直行便を飛ばした、と言う訳です。当時は「ベーリング海経由の直行便」と言う言い方をされていました。
JALがシベリア上空通過の直行便を運航開始したのは、フィンエアーの日本就航の3年後の1986年で、この後少しずつシベリア上空経由へとシフトしていくのですが、直行便の発着枠は1990年代でも限られていたので、半数近くがアンカレジ経由での運航を継続していました。

このフィンエアーのフライト、1991年3月の時刻表でスケジュールを確認してみると、こんな感じになっています。
Flight No. Route Dep Arr Eqp Operation Stop
AY915 NRTHEL 1000 1550   D10 ..3…7 0
AY914 HELNRT 1920 1555+1 D10 1…5.. 0
+1 出発日の翌日到着

当時のフィンエアーの保有機のうち、このベーリング海経由の直行便を運航することができたのは、N345HCの登録の1機だけで、他の機体は日本路線への投入ができず、飛来することはほぼありませんでした。
スケジュールを見てみると、ヘルシンキから到着した機体は、同日中の折り返しをせず、一晩成田でステイした後、翌朝ヘルシンキに向かっていることが分かります。現在のフィンエアーの運航スケジュールと比較しても、成田発便の出発が早く、到着が遅いので、所要時間は13時間弱でしょうか。DC-10で運航していても、飛行機の速度は今とあまり変わりませんので、ベーリング海経由で運航していたことがここからも分かります。
ちなみに、月曜夜ヘルシンキ発→火曜午後成田着→水曜午前成田発→水曜午後ヘルシンキ着→木曜日お休み→金曜夜ヘルシンキ発→土曜午後成田着→日曜午前成田発→日曜午後ヘルシンキ着と、成田以外に投入できる時間は水曜の夜から金曜夜のみ、ということもこの時刻表から分かります。

さて、このベーリング海経由直行便、1991年の夏スケジュールを機にシベリア直行ルートに切り替わったようで、1991年8月の時刻表を見ると、このようにスケジュールが変わっています。
Flight No. Route Dep Arr Eqp Operation Stop
AY915 NRTHEL 1000 1550   D10 ..3…7 0
AY914 HELNRT 1920 1120+1 D10 1…5.. 0
+1 出発日の翌日到着

所要時間は10時間40分と、1時間20分短縮されています。面白いのは成田で一晩ステイするスケジュールは変えていないようで、午前中に到着して、成田でほぼ一日ステイ、翌日ヘルシンキに帰って行っています。この頃からDC-10の運用制限が解除され、N345HC以外のDC-10がやってくるようになりました。

1992年の冬スケジュールにはDC-10からMD-11に機材が置き換えになりますが、週2便の運航は変わらず続きます。尤も、1日無駄に成田に放置する運用は1993年3月の時刻表では消滅しており、ヘルシンキ発が火曜、土曜に切り替わり、出発時刻が2時間半前倒しになっています。

この状態が長く続き、毎日運航になったのは何と2010年。今や成田は夏場ダブルデイリーになっている他、関空、名古屋からは毎日運航していますし、韓国や中国からもたくさんの直行便を運航していますが、「初めてのアジア乗り入れ」において、画期的とも言える直行便を運航したことは、おそらく民間航空史に残る偉業の一つではないかと思います。

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