何回かに分けて、飛行機の写真の撮り方の基本になりそうな話を書いてみようと思います。今日はその1回目、「機材選び」です。
かなりコンパクトなミラーレス一眼も、スマホと比べれば巨大なカメラ
よく空港で飛行機の撮影をしている人を見ると、大きいカメラに大砲みたいなレンズをつけている、と思っておられる方が多いような気がします。もちろんスマホと比較すれば、一眼レフを持っているだけで「大きいカメラ」でしょうし、普段望遠レンズを使っていない人からしたら、普通の望遠ズームレンズも大砲みたいなレンズに見えてしまうかもしれません。
飛行機の写真を撮る、というだけであれば、正直スマホでもコンデジと呼ばれるレンズ固定式のデジタルカメラでも十分撮影できます。下の写真は、レンズ固定式のコンパクトカメラで撮影した写真ですが、こんな感じで普通に撮影できてしまいます。もちろん、これがダメと言う訳でもなく、実際にこの写真で海外の飛行機写真投稿サイトの審査を通過していますので、問題ありません。
Canon PowerShot SX130 IS Pモード(1/1000秒 F4.5 ISO80)
ただ、いくつか問題がない訳ではありません。現在のデジタルカメラ市場においては、
(1)レンズ固定式デジタルカメラ(コンパクトデジタルカメラ、コンデジ)
(2)ミラーレス一眼レフ
(3)一眼レフ
の3種類に大まかに分けて存在しています。
(1)はレンズの交換はできませんが、一方で技術の進歩もあって、高倍率のズームレンズがついているので、結構望遠で撮影できる機種も複数存在しています。
(2)はレンズ交換可能なカメラですが、基本的にレンズを通して見えている被写体をセンサー経由でモニターに写し、それを撮影するタイプです。一部機種では「電子ビューファインダー(EVF)」を通して疑似的にファインダーを覗くスタイルになっている機種もあります。
(3)はレンズ交換可能で、レンズを通して見える被写体をファインダーを通じて見ることができ、それをセンサーで記録するタイプです。
(1)と(2)の問題点は、レリーズラグと呼ばれるシャッターボタンを押してシャッターが切れるまで、若干の「間」が存在していることですが、最近は改善されてきており、比較的すんなりと撮影できる機種も増えてきています。(3)は、シャッターボタンを押すと同時にシャッターが切れますので、撮影チャンスは逃しにくいですが、一方でレンズを通して見える被写体をファインダーに映すためのミラーが入っており、その分ボディが大きくなる傾向があります。
またデジタルカメラには、従来のカメラのフィルムの代替として電子センサーが入っており、この大きさが写真の画質に影響することも知られています。(1)のカメラでは小型のセンサーが使用されていることが多く、主流は1/2.3インチや1インチと呼ばれるものが多いです。ちなみにスマホはこれよりも小さい1/3インチや1/3.2インチというサイズが採用されていることが多いようです。(2)のカメラではマイクロフォーサーズ(3/4)やAPS-Cと言ったサイズが多いです。(3)のカメラはAPS-Cやフルサイズと言ったサイズが多くなります。フルサイズは従来の35㎜版フィルムと同じ大きさですが、一方でAPS-Cではフィルムカメラの2/3サイズ、マイクロフォーサーズでは1/2サイズ程度で、コンデジのセンサーはさらに小さくなります。
当然ですが、センサーが大きいカメラはボディのサイズが大きくなりますので、フルサイズセンサー搭載の一眼レフは、小さいセンサーを積んでいるコンデジやスマホよりも大きなボディになります。一方でソニーを中心に、フルサイズ搭載のミラーレス一眼レフも市場には存在していますが、小さいセンサー搭載のミラーレスと比較すると、当然フルサイズ搭載ミラーレスの方が、カメラの大きさは大きくなります。
最近のミラーレス一眼ならこれくらいは撮影できる(EOS M5 EF-M 18-150mm F3.5-6.3)
前提の話が長くなりましたが、動いている飛行機をそれなりに撮影したい、ということになると、この中のどのカメラを使うのが良いのでしょうか。答えは「どれでも撮れる」です。私自身、普段はフルサイズの一眼レフがメインカメラですが、ミラーレスを持ち出すこともありますし、とっさに撮影するならスマホやコンデジなんかも使います。
では、きちんと1台カメラを買う、とした場合はどうか、と聞かれたら、お金の出し惜しみをしない、というのであれば、フルサイズセンサー搭載の一眼レフをお勧めします。なぜかと言うと、コンデジで始めて、その後性能に不満を持ってミラーレス購入、さらに不満が出て一眼レフ(APS-Cセンサーのエントリークラス)、さらに不満が出て一眼レフの買い替え(APS-Cの中級機)、最後はフルサイズの一眼レフと言うパターンに陥っているケースを何度も見てきていまして、結果的に最初からフルサイズのボディをドンっと買ってしまう方が安くついてしまうケースが多々あるからです。私も結果的にAPS-Cエントリークラス→APS-C中級機→フルサイズと移行してきたので、最初からフルサイズ使っておけばよかった、と今更ながらに思うことはあります。
ただ、いきなりよく分からないのにボディが15万、レンズが30万の45万円の投資はできない、という場合は、APS-Cセンサー搭載の最上級モデルと、それなりのレンズを買うという選択肢になりますが、これでも値段は少し安くなる程度になりますので、決して安くはありません。ただ、写真を本気で撮影しよう、と思っておられるのであれば、このあたりのカメラから始めて、撮影技術を本気で学べば、1年、2年経てばそれなりの写真は撮れるようになると思います。
シャッターチャンスに強いのはやはり一眼レフ (EOS 5D Mark IV EF 100-400mm F4.5-5.6L IS USM II)
一方で、資金的にこのあたりが厳しい、ということであれば、上記の(1)、(2)、(3)のいずれが良いか、という議論になると思うのですが、やはり動いている物を撮影する場合は、(3)の一眼レフが圧倒的です。(2)のミラーレスも最近は技術が進歩してきているので、そこまで撮影しづらいことはなくなってきましたが、やはりファインダーを覗いてシャッターを切るまでの時間では、一眼レフが圧倒的です。
ちなみに(1)のコンデジや(2)のミラーレス一眼でも、飛行機の撮影ができない訳ではありません。コツをつかめばかなり上手に撮影できるようになるので、まずは手持ちのカメラでやってみたい、ということであれば、このあたりのカメラで始めるのもよいかもしれませんが、最終的には(3)の一眼レフの使い勝手には勝るものがない、という結論になります。
次に、必要なレンズ(焦点距離)ですが、基本的にフルサイズ換算で35mmから400mmまでレンズを揃えておけば、大半の写真は撮影できてしまいます。APS-Cであれば22mmから250mmまで、早い話がエントリーモデルのキットレンズ2本付きを購入すれば、それで大半の撮影はできることになります。
ここまでで機材選びが終わりましたので、次回は飛行機撮影実践編に入ります。