ボーイング社の旅客機は、ボーイング707に始まり、なぜか717が飛んだあと727、737、747、757、767、777と順番に進んで行きました。ほぼ永久欠番になっていたボーイング717を「使う」と言う話が出て来たのが1997年。マグドネルダグラスがボーイングに吸収合併されることになり、マグドネルダグラスの作っていた機体は受注分を以て製造終了になる予定だったのですが、唯一MD-95のみが製造されることになり、この機体はボーイングブランドとして売られることになったのです。実はこの機体も製造中止リストに入っていたのですが、ローンチカスタマーになっていたバリュージェット、後のエアトランが、ボーイングからのB737-600への発注振替を拒否。結果的にボーイングはこの機体を製造しないといけなくなったのでした。
その時、なぜか次の「8」を使わず、空き番号になっていた「1」を使って、ボーイング717としてこの世に出ていくことになりました。ボーイングの名前がついているのに、見た目はマグドネルダグラスの伝統的な顔をしており、まさにボーイングの旅客機としては最も「異端児」と言ってよさそうです。
ところが、この機体の出自をたどって行けば、当然ですがマグドネルダグラスの系譜をたどることになります。MD-95の元になっているのはMD-80シリーズであり、さらにさかのぼればDC-9、と言うことになります。機体の長さから判断すると、DC-9なら-40シリーズ、MD-80シリーズなら-87あたりが同等の機体に該当します。そして伝統のリアエンジン双発と言うのも、まさにDC-9。ボーイングとしては、主力のB737のかつてのライバルを、別の機体として売り込むことになった訳です。
もちろん、見た目は伝統的なマグドネルダグラスの顔、しかし名前はボーイングと言う不思議な機体が出来上がってきた、と言うことになります。また、コックピットアビオニクスは完全に近代化され、グラスコックピットを装備しており、A320で採用されたフライ・バイ・ワイヤも採用。エンジンもMD-80シリーズのJT8DやMD-90のV2500とも違い、BMWロールスロイスのBR715が採用されている点も、従来のMDシリーズとの違いがある点が特徴的かもしれません。
1998年に初飛行、1999年10月に運用開始になります。エアトランを筆頭に、ハワイアン航空、バンコクエアウェイズ、スペインのアエバルなどにデリバリーされていき、最終的に156機が製造されるに至りました。ただ、歴代のボーイング、あるいはDC-9の血統のMD-80シリーズやMD-90と比べるといささかさみしい数字ではありますが、ボーイングとしては、自社の他の機体との競合もあるので、受注分を作ったらさっさと737へ、と言うことを考えていたのかもしれません。
その後、デリバリー先の航空会社の吸収合併で活躍の場を失ったり、後継機種への置き換えが進んだ結果、現在はアメリカのデルタ航空が全生産数の6割に相当する91機を運用している他、ハワイアン航空、カンタス航空などで活躍を続けています。製造から20年ほど経過していますが、意外に生存している機体が多いとも言えそうです。