チャイナエアライン(中華航空)は台湾を代表する航空会社で、昨今はずいぶん減ってしまいましたが、ボーイング747を多数運航している航空会社でもありました。旅客機としてもまだ現役を続けている機体は多数存在していますが、その中で最も異彩を放っていたのがこちらの機体です。見た目はチャイナエアラインの当時の塗装を纏っていますので、昨今の「特別塗装機がー」とか「アントノフ225がー」という方には何のこっちゃ、でしょう。
台湾は中国と同じくB-で始まる登録記号を使用しています。チャイナエアライン所属の機体は、基本的にB-18で始まる5桁の数字、747の場合はB-18201から始まる登録になっています。尤も、以前のB-3桁から変更登録された機体や、リースバックされて米国籍になった機体、系列会社から編入された機体などもいまして、B-18251だのB-18271だの存在し、結果的に18機のボーイング747-400を使用しています。そのうち、1機は、デリバリー直後に香港啓徳空港で着陸に失敗してオーバーランし、登録抹消になっています。
ところがこの機体は3B-で始まる登録です。3Bってどこだ、ということになるのですが、インド洋の島国、モーリシャスの登録です。しかも、チャイナエアラインは、ボーイング社のカスタマーコードは09で12ではありません。12はマレーシア・シンガポール航空、その後シンガポール航空が引き継いだコードになります。
モーリシャス?シンガポール?台湾とは全く関係のない国が出てくるところが、航空機の面白いところです。
香港啓徳空港でオーバーランして登録抹消になった機体、代替機をボーイングに発注しているのですが、当時の747-400は人気機種で、デリバリーまでは数年かかることになります。一方で、チャイナエアラインとして、747-200Bはまだ戦力としてバンバン飛ばしていたので、機材は充足していません。その代わりになる機体を中古で購入するなり、リースするなりしないといけなくなります。
そこで、ボーイング747-400を多数運用していたシンガポール航空からリースすることになったのです。通常、リース機は、短期であればそのままの塗装にタイトルだけ貼って、登録番号も変わらずに運用、長期になれば塗装は変わるものの登録はそのままで運用、もしくは塗装も登録も変えて運用のいずれかになります。この機体の場合は、3番目のケースになっているのですが、一方で台湾に登録されていません。
おそらくこの機体、シンガポール航空から短期リースで借りることになったので、塗装こそ当時のチャイナエアライン塗装になりましたが、今以上に中国と台湾の関係が微妙だった当時、シンガポール国籍のまま、台湾の航空会社の機体として運航することにはかなりの問題がありました。。そこで、台湾との関係が良好だったモーリシャスに機体の登録を行い、シンガポール航空時代の登録記号、9V-SMCの下3文字をそのままもらった形で登録になったのです。それゆえに3B-SMCという、非常に不可思議な登録記号になった、という訳です。
この機体、1989年7月にデリバリーされていまして、1994年から97年の3年間チャイナエアラインで活躍し、シンガポール航空へとリースバックされていきました。その後、2004年にエアアトランタアイスランディックに売却、2006年に香港のオアシス香港航空へ転籍、2008年にインドネシアのライオンエアに転籍、2015年に退役し、2018年に解体されています。