最近は増えているのかもしれないが、私たちの年代では、男性がキッチンに立つことは稀だと言われている。そうやって考えると、我が家は少し他と違っているのかもしれない。
私自身、高校生の頃から一人暮らしをしていたので、たいがいのことは自分でできる。いわゆる家事全般はこなせるので、掃除、洗濯、炊事と言った基本は押さえている。尤も、結婚してからは掃除が、子供が生まれてからは洗濯が嫁の管轄になり、以前は「家事の7割を担当」していたが、今や私の管轄は炊事のみ、子育ても基本風呂入れのみである。そのうち嫁に文句を言われるのは分かっているが、こちらも仕事があるのでそうは言っていられない。
その炊事だが、何度か実家に戻った挙句、完全に独り立ちした後にはまり込んだせいで、たいがいの料理は作れてしまう。旅先で食べた食事を再現してみたり、レストランで出てきたメニューをまねてみたり、いろいろとそんなことをしていると、食べてみたいという話につながって、最終的に自宅でお食事会、となったことが何度かある。さすがに最近は乳児が居るのでやっていないが、過去ペルシャ料理、ロシア料理、タイ料理、中華料理など、様々なメニューを考えて1品ずつ出していく、ということをやっている。
その時は、メニューを嫁と二人で考え、最終的に自分で決めていくのだが、今のところゲストに一番恐れられた料理がある。それがこちらである。
タイ料理で、南部タイで食されている「クアクリン」という料理である。見た目普通においしそうなタイ料理なのだが、実はものすごく辛い。どれくらい辛いかと言うと、これを一口食べただけでご飯が茶碗半分くらい食べられる、と言うと分かっていただけるだろうか。
この料理、最初に知ったのはタイの友人からであった。プーケットに一緒に滞在していた時に、私のタイ料理好き、辛いもの好きなのを知って、「お前にぜひ食べさせたい料理がある」と言って出てきたのがこれだった。
さすがに辛すぎるので、この料理を出すか迷ったのだが、食べに来たゲストには辛いもの好きも多いが、苦手というゲストもいた。よって、あらかじめ「ものすごい辛い」ことを伝えて出した。すると、元々辛い物が好きなゲストには大うけだったが、一方で辛いものが苦手なゲストには、「殺人的なにおいがする」と言われて食べてもらえなかった。
そもそもタイ料理なので最初から最後まで辛いのだが、辛い物が苦手なゲストはそれを知っていたのかどうか定かではない。
この料理の締めにマンゴープリンを出してみたが、こちらは殊の外好評であった。