ペナンの商家を使った宿(その2)

ペナンの商家を使った宿(その2)

前回に引き続きペナンの宿のお話しである。2泊目は、ペナンでおそらく最も有名な宿の一つ、チョン・ファッ・ツィーブルーマンションに宿泊した。こちらは19世紀末に華僑の商人、チョン・ファッ・ツィーが建てた邸宅をそのままホテルに転用したものだ。建物は中国様式で風水による部屋の配置になっている。公式にはチョン・ファッ・ツィーの住宅として建設されているが、実際には彼が最も寵愛した7番目の夫人とその家族のためだったらしい。一説によると、彼の8度の結婚のうち、7度は戦略的なもので、7番目の夫人だけが愛情を持っての結婚だった、と言われている。
彼の遺言で、息子が全員この世を去るまでは、ペナンの邸宅は処分してはならなかったようだ。結果、1989年に最後の息子が死去し、建物を買い取った方が再建している。再建前の写真も館内に掲示されていたが、当時は8家族が荒廃したお屋敷に住んでいたようで、現在の雰囲気とは程遠い様子であった。再建後、館内はホテルと博物館として使用されているが、宿泊しないと室内は見られないようになっている。
旅先のホテルについては特に要望してこない嫁が、珍しくこのホテルに泊まりたい、とリクエストがあったので、今回はここに投宿することになった。

前日泊まったレン・イ・タンからはタクシーで移動。青い外観が特徴的なこの建物までは5分ほどであった。チェックイン時におしぼりとウェルカムドリンクが出されて、高級な雰囲気を醸し出している。部屋は1階のシャワーのみのツインルームにしたが、きちんとエアコンも効いており、外の喧騒とは隔離されている(が、夜になると隣の屋台の歌謡ショーで歌う地元の歌手の歌がよく聞こえてくる)。

ネットで検索してみると、チョン・ファッ・ツィーの夫人たちの幽霊が出る、なんて話もあったのだが、実際宿泊して霊感をまったく感じない私たち夫妻には関係がなかった。一方、部屋は前日のレン・イ・タンと比べると普通で、取り立てて特徴がある訳ではなかった。
尤も、建物自体は非常に贅を尽くして作られており、青く塗られた壁が醸し出す独特の雰囲気は、この宿に宿泊しないと感じられないのかもしれない。

翌朝の朝食はセットメニューで出されるようで、注文するとしばらくして頼んだものが運ばれてきた。取り立てて印象には残っていないので、可もなく不可もなくだったと思う。

チェックアウト後、宿泊客は無料で参加できる内部見学ツアーに参加。中国系マレーシア人の男性が、ユーモアたっぷりに、チョン・ファッ・ツィーの一生と7番目の夫人の物語を1時間にわたってそれぞれの場所で聞かせてくれた。19世紀から20世紀の歴史に興味のある私にとっては非常に面白い時間であった。

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