私自身、小さな日帰り手術は生涯で5回受けており、1つは皮膚科、残りは外科であった。最近は鎮痛剤などの技術も進歩しており、痛みを感じない訳ではないが、のたうち回って大変なことになったのはそのうち1回だけで、残りは普通に生活できている。尤も、術後の傷口の周りがかゆいことには何度となく閉口した。
さて、私自身はほとんど手術らしい手術を受けていないのだが、息子は生後10日で大きな手術を受けており、小さな身体に大きな傷跡が残っている。私はこの傷跡を彼が頑張った勲章だと思っており、個性の一つとして捉えている。
息子は心臓の血管の配置が先天的に逆転している完全大血管転位という障害で、手術は12時間に及ぶものになった。当時わずか3kgの小さな身体で耐えられるのか、とすら思ったが、近くの総合病院に在籍されている心臓血管外科の名医の先生に執刀していただくことができ、術前の説明でも「必ず元気になりますから」とおっしゃられており、先生の手術に対する自信を感じた。12時間の手術時間、容体が安定する翌日までの間、そして退院するまでの間は肝を冷やしたが、1か月ほどで無事に退院となり、現在はそんな大手術の痕跡は、胸に大きく残る傷だけになっている。
今は医療技術が進歩したおかげで、息子は出生前に異常が見つかり、手術も早期に行うことができた。おそらく私の年代であれば手術の方法も今と異なっていたし、その後においてもまだ手術の成功率は高くなかった。そういう意味では、息子はこの時代に生まれてきて、無事一命をとりとめた、と言ってもよいかもしれない。
ちなみに親父(つまり私)の背中にも、外科手術の傷跡が残っているが、こちらは粉瘤の巨大化したものを除去したもの。放置しておいたので手術で除去するべき部分が大きくなり、傷跡が大きくなってしまった。外科手術は怖がらずに早く受けるべきだと実感した。